VPP(バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant))とは
電力需給の大原則として、使う電気(需要)と送る電気(供給)の量が常に同じになるようにバランスさせる=同時同量があります。そのため、需要に合わせて供給をすることや、瞬時瞬時の需給の変化に対応することが重要です。
これまで同時同量を保つ役割は、主に「出力調整が比較的容易で大型の」ピーク電源と呼ばれる発電設備、特にLNG火力発電の出力調整によって担われてきました。
一方で、本日のテーマである「VPP」という概念が、なぜ登場してきたかというと、結論から言いますと、再生可能エネルギー、特に太陽光発電が普及してきたからです。どういうことかと言いますと、電気の需要が最も高まるタイミングは空調負荷が最大化する「真夏の平日の昼間」ですが、この時間帯、近年では太陽光の発電量が大きく、停止している火力も増えてきています。一方夏季の日没後~夜の早い時間帯、すなわち気温が高く大きな空調負荷が継続中で、太陽光発電の発電終了した状況で需給の逼迫が発生しています。これは多くの先進国で発生している状況で、下図(出展:日本経済新聞)のように「ダックカーブ」と呼ばれています。
以上のように、太陽光発電が発電しなくなる夕方18時くらいに需給逼迫がピークとなっており、大規模火力発電をその時間のためだけに稼働することは、設備運用面および経済面の両方から効率が良くないため、他の方法=VPPの出番となります。
もう一つ太陽光に起因するVPPの出番があります。それは、急激な天候変化によって、太陽光発電量が急激に激減することがあるからです。天気予報では予測出来なかった急激な太陽光発電量の激減に対して、緊急に大規模火力発電を稼働することは困難なことです。
では、待機中の火力発電を緊急稼働させずに、同時同量を達成できる方法=VPPとはどのようなものなのでしょうか?以下の3つの方法が考えられます。
1)工場などが有する自家用発電機を稼働する
2)蓄電池から放電する
3)電気使用量を下げる(デマンドレスポンス(DR))
1)と2)はわかりやすいですが、3)はどういうことでしょうか。
DRは、電力の需給が逼迫し、需要超過の恐れがある時に、電気を使用している需要側の節電(電気使用量を下げる)することにより、エリア内の需給状況を緩和することです。具体的には、工場や業務用ビルなどの動力負荷制御、すなわちポンプを止めるとか、空調設備の負荷を落とすとか、が該当します。
この3つの機能を含めて、IoT(モノのインターネット)を活用した高度なエネルギーマネジメント技術により、これらを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合制御することで、電気の需給を調整するシステムのことを「VPP」と言っています。「仮想ピーク電源」として、電気が足りないタイミングは自家用発電機や蓄電池に対して電力創出指令を出し、さらに電気使用の制御(DR)指令を出して、2つの指令を同時かつ比較的高速に需給を調整することです。
このようにVPPは、発電所や電力系統への新たな設備投資の抑制を図りながら、地域全体の電力需給バランス調整や再エネの普及促進による脱炭素化への貢献が期待されています。
スマートエナジー熊本も、これまでに熊本市の公共施設への蓄電池設置や動力負荷を利活用したDRの検討を実施しました。今後もVPPシステムの実証を重ね、熊本市の脱炭素化やレジリエンス強化の実現に向けた取り組みを実施していきます。